東京の即身仏の件

中国では、福建省の妙智大師のように、現在でも即身仏になっても許される(http://society.people.com.cn/BIG5/1062/4352631.html)。また死後、香河老人と称される人物も家で腐敗せずに「金剛瑠璃体」になって信仰されている。
日本では、即身仏になると犯罪になる。

真夏の怪談“111歳”ミイラ男性放置…「パワーと年金」にすがった家族の異様

配信元:産経新聞

 日本を暗い影で覆う高齢者の所在不明ラッシュ。その発端となったのは、生きていれば111歳となる男性が7月下旬、東京・足立区の民家でミイラ化遺体で発見された事件だった。約30年前に「即身成仏する」と言い残し、男性はこの世を去った。約2年後に部屋をのぞいた家族は男性の死亡を確認していたにもかかわらず、放置したまま同居を続けていた。異様な家族関係、年金の不正受給疑惑…。“現代の怪談”の闇は深い。

■「異空間」に横たわっていたのは…
 舞台は荒川沿いに広がる住宅地、足立区千住の一角に建つ古びた民家。高さ約2メートルのコンクリート壁に囲まれ、周囲からは隔絶された雰囲気が漂う。
 約30年間止まったままだった“時の壁”を破ったのは、7月28日に警視庁千住警察署を訪れた1人の女性(53)の驚愕(きょうがく)の一言だった。
 「祖父が『即身成仏する』と言い、30数年前から部屋に閉じこもったままだ。水も食事も取っていない」
 捜査員はすぐに自宅に向かった。同日午後1時29分。1階の和室のドアを開けると、そこには「異空間」(捜査幹部)が広がっていた。
 パイプベッドに横たわった男性の遺体。肌着や下着を身に着けてはいたが、仰向けのまま、頭は白骨化して体はミイラ化が進んでいた。畳にはホコリが積もり、体に掛かっている布は茶色に変色。布団か毛布かの判別もできないほどだった。
 「特に異臭があったわけではない。ただ、ホコリっぽくてカビ臭かった。長い間、誰も足を踏み入れていないんだろうな、という感じがした」
 室内をのぞいた捜査幹部はこう振り返った。ベッドそばの将棋盤に無造作に置かれた昭和53年11月9日付の足立区報、同月5日付の全国紙が時代の移ろいを感じさせたという。
 遺体は戸籍上111歳とされた加藤宗現(そうげん)さんとみられる。加藤さんは明治32(1899)年7月22日生まれで、この民家には長女(81)、娘婿(83)、同署を訪れた孫娘、孫の男性(49)が暮らしていた。
 「閉じこもった10日後には部屋から異臭がした」
 娘婿は同署に対しこう説明しており、加藤さんは閉じこもってから程なくして死亡したとみられている。

 ■「説法」「植物状態」…変遷した家族の説明
 都内の男性最高齢とされた加藤さんの近況を知ろうと、民生委員や区職員は今年に入り、家族に対して面会を求めていた。
 民生委員の女性(73)は平成5年に初めて加藤さん方を訪問して以来、一度も会えないことから1月、区に相談を寄せた。
 区などが面会を求めた際に家族から返ってきたのは次のような言葉だった。
 「生きているが、他人には会いたくないと言っている」(平成20、21年)
 「祖父は5年ほど前から面倒を見切れなくなり、岐阜の施設に預けている」(今年2月4日)
 「田舎の住所は長くてすぐに教えられない」(同)
 「家の中で寝ている」(2月中旬)
 「岐阜県の寺で説法をしている。弟の所に身を寄せている」(6月)
 家族は次々と説明を変遷させて、面会を拒否し続けた。区は立ち入り調査も検討したが、家族が生きていると説明する以上、「現状では困難」と結論付け、5月には千住署に協力を要請した。
 「町内会で敬老会の記念品を渡すこともあったが、家族が受け取りに来て、宗現さんを一度も見たことがない。家族は愛想が良かったけれど、うそをつき続けていたのか…」
 民生委員の女性はこう憤る。
 7月26日、同署員は区職員らとともに誕生祝いを持って自宅を訪れた。
 「植物状態で起きられない。記念品は辞退する。何もいらないから帰ってください」 
 その場では強硬な姿勢を貫いた孫娘や長女だったが、知人に説得され、2日後の同28日、ついに自ら同署を訪ねて事情を説明したのだった。
 即身成仏−。人間が悟りを開き仏になることを指す言葉を残して部屋に閉じこもった加藤さんは、どんな人物だったのだろうか。
 昭和2年と11年に中央大専門部法学科と同大法学部を2度卒業し、11年6月には旧制中学・高等女学校の教員免許を取得。13年3月には弁理士登録を行っている。その後、貸金業を行っていたとの情報もある。
 「加藤さんは3代前の住職の弟で、若いころに縁を切り、寺を出ていったそうです」
 こう話すのは、岐阜県池田町で16代続く寺院「正道寺」の住職の義母(72)だ。
 数年前、加藤さんの孫の男性が寺に立ち寄ったという。男性は「祖父から『自分は正道寺の出だ』と聞いた。祖父は元気で生きている」と話し、住職の義母は寺院の写真を手渡したという。
 報道で事件を知った義母は「裏切られた。信じられない気持ち」とうなだれた。

 ■ミイラ化は偶然? 「絶対権力」の一言で…
 住宅街などで人が死亡した場合、腐敗に伴って異臭が周辺に漏れ出し、住民が通報して遺体が発見される場合が多い。では、なぜ加藤さんはミイラ化していたのか。
 「遺体は乾燥しやすい状況になると、水分が急激に失われ、腐敗せずにミイラ化する」
 捜査関係者はこう説明し、ミイラ化の理由として電気毛布の存在を挙げる。
 電気毛布はベッドのマットレス、敷布団の上に敷かれ、スイッチが入っていた。ただ、遺体発見時には通電しておらず、何らかの原因で故障した可能性があるという。
 「(閉じこもった)2年後に部屋をのぞくと白骨化していた。部屋の換気を行った」 
 娘婿は同署にこう説明しているが、他の家族が室内に入った形跡はないという。ただ、孫娘らは「今年3月にはドアが開いており、中をのぞいたら頭蓋骨(ずがいこつ)が見えた。祖父が持つパワーでドアが開いた」などと話しており、加藤さんの死亡については同居する家族全員が知っていたとみられるのだ。
 「祖父は厳格で(家族の中で)絶対的な力を持っていた。『開けるな』といわれており、怖くて近づけなかった」
 孫娘は加藤家に「家長制度」が残っていたことを主張しているが、一方で遺体発見時に「早く運んでください」と話すなど、家族に悲しむ素振りは見られなかったという。
 「家族の関係があまりにも希薄で理解できない点が多い。ウソをついているのか本当のことを話しているのか、まだまだ分からないことだらけだ」(捜査員)
 保護責任者遺棄致死容疑や死体遺棄容疑の適用は、すでに公訴時効を迎えているとみられる。

(中略)

 ■不正受給の総額は1800万円?

 一方、千住署が加藤さんの家族から任意の事情聴取を重ねる中で、ある疑惑が浮かび上がった。「詐欺容疑」である。
 「(加藤さんの口座から)年金を引き出し、一部は貸金庫に移した」
 孫娘はこう話しており、同署は家族が年金の不正受給を続けていたとの見方を強めているのだ。
 加藤さんは妻が死亡した平成16年8月以降、妻が加入していた公立学校共済組合の遺族年金(月額約16万円)を受給。それ以前は老齢福祉年金を受け取っており、家族が勝手に老齢福祉年金から支給額の大きい遺族年金に切り替えた可能性もある。
 日本年金機構(東京都杉並区)によると、平成16年9月までの老齢福祉年金の総額は最大約880万円に上るとみられ、遺族年金約950万円と合わせ、計約1800万円が支給されていたことになる。
 遺族年金の残高は約340万円で、約610万円がすでに引き出され、このうち、加藤さんへの安否確認が活発になった7月中旬以降、6回計270万円が引き出されていた。
 「家族が行政や警察の動きを察知し、確信犯的に引き出した可能性もある」(捜査関係者)
 残り数百万円の使途なども不明で、「封印された30年」の解明作業は緒に就いたばかりだ。
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/event/crime/425609/