原稿料が振り込まれる

口座をみたら残額がどーんと増えていた。給料日には一日早い。そもそも給料よりも増え方がいい。なんだろうと思ったら某町史(初稿を出してから某町史はどうなているんだろうか???)の原稿料らしい。
いまよりももっと、もっと、もーっと貧乏だった頃、某市史に入って原稿を書かせてもらったことがあった。はじめて書く市史などというものに七転八倒した。校正も一段落して、忘れたころ、原稿料が振り込まれたのだ。
三十数万円の原稿料に私は狂喜乱舞した。これは有意義に利用しなければならない、と思案したあげく、CONTAX Ariaを購入しようと思ったのだった。当時、私はNikon FEに50mmレンズという一見するとカッコをつけているような風情(実は、もらい物)で調査に行き、写真を撮る度に不便さを身にしみて味わっていたのだった。
当時、まだCONTAXは現役ブランドであり、かつAriaはレンズ二本セット10万円などという捨て値で売られていたものだった(よく考えれば、あれが京セラ撤退の前触れだったのだろう)。当時の10万円はたいそうな金額だった。梅田の何とかカメラで下見をして、いざお金を引き出そうと思ったら口座の残額が数万円しかない。
昨日まで三十数万円あったはずなのに。なぜ数万円しかないのだ。
私は「膝の力が抜ける」という事実をその時知ったのだった。
なぜ、一夜にして数十万円が消え去ったのか!
記帳してみると、学費が引き落とされていたのである。
私は、学費のために某市史の原稿を書いたのではないと、天を恨みながら、その後数年間ぼっろいカメラで写真を撮り続けなければならなかった。
その後、少しお金が入るようになり、CONTAX Tvs Digitalを購入し(この時には京セラはカメラ事業から撤退してしまっていた)、さらにお金が入るようになって、CONTAX RXを購入した(もはやフイルムカメラなど現役で使っている人は回りにほとんどいなかった)のだ。CONTAXの恨みは恐ろしいのだ。
というようなたいへん貧乏だったころの話を思い出してしまった。
さて、某町史執筆記念には何を購入すべきであろう。マニュアルフォーカスはしんどいので、CONTAX AX辺りだろうか。